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実 小林

AIについてのあれこれ

更新日:7月1日


 

最近どこででも見かけるChat GPT。対話型AIと呼ばれるこれらのプログラムの性能は、最初目にすると「ついにAIもここまできたか!」というような感動があります。昭和世代の私からすると、子供の頃に見た漫画やアニメの世界がついにすぐそこまで来ているのかという感慨に駆られてしまいます。


対話型AIに至る道-現代のAIを支える技術

現在、AIと表現されている技術は、その言葉が出始めた頃と比べて、とても進化したものになっている印象があります。


もともとのAIという単語は、人工知能そのものを指しており、古くは1950年代から利用・研究されていた概念であるようです。言葉で定義するなら「あるインプットに対し、特定のルールに基づいて計算・処理を行った上で回答を出すプログラム」であり、これほどコンピュータが発達する以前は、それこそ電卓ですらAIの走りであると言えます。子供の頃、炊飯器やエアコンに「マイコン搭載」という製品が出始めた頃はそれだけで、「すげぇ!」となった覚えがありますし、事実、それまでの単純処理の機械とは大きくことなった商品として様々なヒット製品を生み出す事になりました。


このレベルから現在につながる礎となったのは、やはり、AppleⅡなどのパーソナルコンピュータが発売されファミコンなどのゲーム用コンピュータが家庭普及を始めた事に尽きると思います。特にWindows95以降、マウスで操作可能なGUIがOSに組み込まれて以降、その汎用性の高さから急速にビジネスの現場にコンピュータが浸透していったことで市場が広がり、以後、3年で性能が倍になるといわれる速度で進化していったことで、その性能を活かすコンピューティング技術として特に、漫画やアニメで表現される人間と同等のち脳を持つ人口知能=AIとしての未来が急速に現実に近いものとなっていくことになります。


ここで登場したのが人の脳の動きを真似てプログラム自身が進化するプログラム構造「ニューラルコンピューティング」であり、「機械学習」や「ディープラーニング」は、その実装の為の技術の一つということになります。ディープラーニングは少し前にブームになった単語でもあるので、比較的耳覚えのある単語かと思いますが、現在の対話型AIを支える技術としてディープラーニングを抜きに語ることはできません。 ご参考までに以下に機械学習とディープラーニングの概略を記載します。

 

機械学習の方式

・教師あり学習

正解をシステムに登録し、膨大なデータから正解となるデータを学習させることで、認識・予測の制度を高めていく方式

ex)猫の写真を複数正解として登録し、それに対して猫を含む膨大な画像データを登録し、その正否を登録することですることで、プログラムが正解画像と正否の結果を参照して、次第に正解となる画像のパターンを分析し、正解予測の制度を高めていくような方式

▷GoogleやiPhoneに写真を登録し、一つの写真に人の名前を登録すると、以後新しく登録された写真から人物を判断し、それが登録された人かどうかを登録者に確認、正解であった場合判断するためのデータを補足していくような形での学習


・教師なし学習

特定のデータそのものが持つ構造・特徴を分析し、人間の介入をさせずにデータ間のパターン分析を行います。


・強化学習

特定の分析結果などに対して報酬を設定し、その「報酬が最大化」することを目標として設定することでプログラム自体が試行錯誤し、プログラム単独で学習を強化していく形の学習


 

・ディープラーニング

機械学習は、各学習で蓄積された判断基準となるデータの塊(ノード)を繋げて複合的に判断するなかで、ノードとノードのつながりを自己評価し、一つの答えに対しての制度を自動的に上げていくようなプログラムとなります。 いわば機械学習の強化型とも言えるもの

上の動画は強化学習の一例。ペッパー君にけん玉が成功したときの報酬だけを設定し、けん玉を習得させると100回目に成功。ここで注目するのは、成功までの試行錯誤を自らペッパーが行い、正解を導き出した以後は一度も失敗することが無いということです。従来のロボットはその作業専用に人が処理するプログラムを構築していることで、この様な汎用ロボットがもっと安価に普及すれば、工場の単純加工や発送・梱包などといった作業は専用のロボットを作成しなくても安価に置き換えることが可能になってしまいます。

 

こうしたコンピュータそのものの急速な成長と機械学習の発達が対話型AIにつながっていくことになります。


対話型AI

さて、Chat GPTというサービスの名前が有名になりすぎている感はありますが、現在話題になっている同様のサービスは、一般的に対話型AIと呼ばれているものです。

対話型AIは、自然言語で文章、もしくは音声でコンピュータに問いを与えることで、同じく自然言語で回答を返してくれるAIを指します。背景にある技術はディープラーニングなので、対話型AIの回答の精度はAIの学習能力はもとより、その学習対象となるデータの分量や精度によって大きくことなります。


Chat GPTが急速に進化した背景としては、インターネットにある膨大なデータを対象としたことが大きく、特定の分野に限らないさまざまな質問に対して回答できるということがあげられます。

また、CHAT GPT発表後Googleも同様のサービスを発表しており、また、Microsoftは自社の製品への組込みを始めており、今年後半にはWordやExcelを始めとしたOffice製品に組み込まれることが発表されています。

企業名

製品名/リンク

概要

OPEN AI

Microsoftが投資する対話型AIの先駆け

Microsoft

Microsoftの検索サービス

Bird

GoogleのAI検索サービス

しかも、最近ではデータが画像や映像にまで分析範囲が広がっており、サービスとしても非常に多岐に渡る分野での活用が行われています。

活用分野

​サービス名

概要

音声自動認識AI

​電話の対応を自動化する音声AI

画像生成AI

​入力された単語で画像を生成

動画生成AI

入力された文章で動画を作成するAI


また、こうした様々なサービスのほとんどが無料、もしくは無料体験のメニューがあるので、簡単に試すことができ、そのクオリティが非常に高いことから、使い方によってはこれまでの作業時間を大幅に短縮化し、作成物全体のクオリティをあげることが可能です。


右の画像は、Microsoft Bing Image Creatorで「対話型AIが変える未来」という文章で作成した画像ですが、人物も含めゼロから作成されたものとは思えない品質です。これまで、こうした画像を資料に差し込もうとした場合、WEBでキーワード検索でイメージに近い画像を検索▷著作権範囲を確認▷価格などを確認した上でダウンロードという作業が必要だったわけですが、こうした作業がほぼ瞬時と言って良い時間で済むようになります。


対話型AIが得意なこと

対話型AIの最も得意なことは、言うまでもなくネットワーク上にあるあらゆる文章から蓄積、学習した自然言語での文章作成です。この文章作成能力は非常に高く、学生が提出論文をAIに書かせることが問題になったなど、記憶に新しいところです。

また、要約や表現力の変更も非常に巧みで、例えば以下の画像の様に最初は通常の口語体で回答させた内容を、子供向けに表現し直すように指示した場合の要約能力は目を見張りますが、何よりもこれらの文章作成にものの数秒しかかからない事実は、既に人間の能力では太刀打ちできない性能と言えます。




対話型AIが苦手なことと注意すべきこと

・得意なこと

学習したデータをもとに、データの中の頻度などを分析し解釈するという対話型AIの特性上、上記の様な文章の要約や、計算結果として正解のあるものについての解釈は対話型AIの最も得意とするところで、特性を理解して利用すると驚くほどの成果をあげてくれます。一部のWEBなどでは、クリエイティブな作業は苦手という表現をよく見かけますが、これも前述の通り、最近では対話型生成AIと言われる分野の商品開発が急速に進化しており、真に芸術的な作品は作れないまでも、体系化されたデザインやイラストなどの生成は十分実用的ですし、作風や表現のバリエーションはデータが蓄積されていく毎に格段に向上していくのは間違いないものと思います。


・苦手なこと

とは言え、やはり苦手なこと、注意すべきことはあり、これは良く言われることですが、対話型AIは「自信をもって間違える」ものということを念頭に置く必要があります。

意外な様ですが、対話型AIは文章の正しさを判断しているわけではありません。あくまでも自分の学習データとしているデータの中で、最も出現頻度が高いものを選んで文章化しているだけに過ぎないので、例えばある情報を参照するデータにネガティブな意見が多ければ、ネガティブなデータを正解として表現します。

特に注意が必要なのは、そうして生成される文章の中でも多くは正しいことが含まれているので、一部に誤ったものがあっても人はそれを信じてしまいがちであることがあげられます。


・注意すべき点

今年の後半から、主なビジネス製品にも積極的に搭載されていくことが予想される対話型AI。既に一部の製品を使い始めている企業も多く、自社開発の業務アプリに組み込んでいるところも多数見受けられる様になっていますが、企業に導入する際に注意すべきと思うことをいくつか書き連ねておきます。


1.データを集計させる際は、範囲を限定する

データを集計させる場合、インターネットにつながった環境では出典が不確かなデータを参照してデータを生成することが考えられます。事実、以下の様な質問をChat GPTに質問した場合、以下の様な回答が得られました。

 

Q.2021年以前の日本のキャッシュレス決済の取扱高を示してください。

A.2016年から2021年までの日本のキャッシュレス業界の取扱高の推移をお伝えします。以下の数字はおおよその推定値であり、正確な数字は日本の政府機関や金融機関の公式な統計データを確認することをおすすめします。

2016年:約39兆円

2017年:約50兆円

2018年:約64兆円

2019年:約76兆円

2020年:約85兆円

2021年:約95兆円

これらの数字は、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、スマートフォン決済など、様々なキャッシュレス決済手段の利用が増加していることを示しています。日本では政府や企業がキャッシュレス決済の普及を推進しており、消費者のキャッシュレス利用が促進されています。

 

上記の回答文中にもありますが、おおよその推定数値での集計とされており、出典が明らかにされていません。

これに対し、さらに以下の質問をしてみます。

 

Q.データの出典を明らかにしてください A.申し訳ありませんが、私はデータベースにアクセスできないため、直接データの出典を提供することはできません。私の知識は2021年9月までのものであり、具体的なデータや出典はその時点での一般的な情報に基づいています。 キャッシュレス業界の取扱高に関するデータを正確かつ信頼性のある情報源から入手するためには、以下のような公的な統計機関や金融機関の報告書を参照することをおすすめします。

  1. 日本銀行(Bank of Japan): キャッシュレス決済の統計情報を提供しています。

  2. 財務省(Ministry of Finance): 金融関連の統計情報を公表しています。

  3. 経済産業省(Ministry of Economy, Trade and Industry): ペイメント関連の統計データを提供していることがあります。

  4. 日本カード協会(The Japan Credit Association): クレジットカード関連の統計情報を提供しています。

これらの機関のウェブサイトや公式レポートをチェックすることで、より正確なキャッシュレス業界の取扱高に関する情報を得ることができるでしょう。

 

上をみても分かる通り、出典元が明らかでない数値に対して判断を下すことは非常に危険なことでもあります。これを防ぐためには、企業内のファイルアクセス権などを設定し、そこに予め用意したデータを学習させる、もしくは対話型AIに質問する以前にデータそのものを手動でアップロードするなどした後で、そのデータについての分析を行うように指示する必要があります。


2.反論検証も行った上で総合的に判断する

前述した通り、対話型AIはあくまでもデータ範囲の文字と文字の関連性で出現頻度の高いものを表示し、それを正しいとして表示しているの過ぎません。

しかし、大変優秀であるために、文章の指定の仕方次第では非常に偏っているにも関わらず、それが正しいと感じられるような文章を作成します。


以下の例では、質問に対して肯定する論拠と否定する論拠をそれぞれ尋ねていますが、どちらの主張もそれなりに説得力があり、聞き方一つで大きく判断する為の情報の印象が異なることがわかります。


3.他者のレポートを読む際に前述二項は特に注意する。反論検証と出典の確認を忘れない)

この様な特性を捉えていれば、非常に有効なツールではあるわけですが、これはあくまで個人で利用する場合の話。これが会社のレポートなどとなった場合、あくまで作成するのは他の社員や部下ということになります。


特定条件で肯定、否定の区別を指定するだけで非常に説得力のある文章を作成してしまうこれらのツールが標準化されると偏ったレポートを検証することなく読み進めてしまうリスクが生まれます。


4.管理下のスタッフの教育を行う

使い方を理解したものとそうでないもの、算盤が電卓に変わったように、パソコンが普及し始めた後、電卓スキルよりExcelのスキルが重要視されるようになったように、対話型AIが普及し始めると、これまで以上に業務の効率という点で持てるもの、持たざるものの格差が広がってしまいます。

思考を行う習慣の無いものは、より思考する必要がなくなり、簡略化した方法で結果を求めるようになります。また、中間で判断するものの知識が足りなければ、いつの間にか偏向した意見が正しい意見として認知され、気づいた際には返って方向修正に時間がかかる可能性さえあります。

社員の能力格差を埋め新しい環境で正しい判断を下すための教育はより重要になるものと考えています。


5.システムの回答は定期的に確認する

対話型AIは学習して賢くなっていきます。それは、人と関わることで回答が変化していくということでもあり、例えばヘルプデスクとして設定したシステムについて、設定によっては稼働当初としばらく経過した後では回答が変化していることも想定されます。

多大な効率化につながる仕組みであることは確かですが、導入当初は好評だったシステムがある日突然不評となる可能性すらありますので、AIの品質維持をどう保つかという視点も必要になると思います。


いずれにせよ、AIが社会に浸透する未来はもう止めることができない程強い流れとなっています。常に進化するツールを使うためには、これまで以上にその特性などを理解していかねばならないということなのでしょう。







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